嘘吐きの特色2


 嘘屋の常連さんの中には、もう一つの共通点がある。
 多くの方が北海道出身であるのだ。
 しかし、これも偶然ではないように思われる。
 

 かつて、私は父から「何故(なせ)北国の民謡は難しいんか」という
話を聞いたことがある。

父は言う(以下共通語訳)。

「北国は雪が降ったら仕事にならないので、冬の間暇な時間だけはある。
しかし、気象はとても厳しいので、みんな生きるのに一生懸命だ。
みんな暇だから、民謡を歌う。しかし、生きるのに必死なので、
いい加減な節まわしでは満足せず、必死で凝りに凝った節回しを考える。

南国の人間は冬でも暇な時間はなくて凝った歌なんか歌えないし、
気候の関係で無理をしなくても死ぬことはないから、
必死で何かに凝る、などということはありえないんだ。」

 思うに、父の言葉は「嘘のつきかた」についても当てはまるのではないか。

 とりわけ、常連さんの中でも、特に凝った嘘を提供しておられる方々が
北海道出身であることを考えるにつけ、父の言葉の中に真実を見た気がする。


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 追記

実は、上の父の言葉は、現在秋田県に在住する父が「民謡王国」秋田県の民謡番組を
見ながら語ったものであるが、つい最近の嘘屋公式オフで、なんと秋田県出身者が、
長期在住経験者(少年期も含む)のわたくしを含めると3人もいることが判明した。
やはり、民謡と嘘の技術には相通じるところがあるのであろうか。


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