健康道場潜入ルポ2
欧米では、自己の責任の下に健康法を行うことは常識となっている。
私は、そんな欧米の健康法の日常を探るべく、ドイツへと旅立った。
オットー健康道場は、ドイツ北部、ファイト(Veit)市のノイマルクト
通りに位置している。
「この道場では、世界中のありとあらゆる健康法を入手・実践できます。」
道場長のリヒャルト・オットー氏は誇らしげに言う。
「ホップ療法をはじめとするドイツ国内の健康法はもちろん、洋の東西を
問わず、あらゆる健康法はこの道場で入手できるのです。」
さらに、この道場では健康法に「健康アップ度」「リスクランキング」を
表示することにより、一般人による健康法の入手に便宜を図っているとい
う。
実際に道場内に入ると、けたたましい喧噪があたりを支配する。
「青竹踏み、2ポイントダウン」
「赤ワイン、変わらず」
この喧噪の中で道場長に注目の健康法を聞いた。
「今注目の健康法は、日本の「サカイ先物」ですね。ここ数ヶ月で300
ポイント高と、順調に推移していますし、ランクづけもA+で、試用に好適
です。以前は「ミノ先物」に人気が集中していましたが、今は弱含みで
しょうか。」
もっとも、リスクの大きな健康法を試すときは、必ずショールズ=ブラック
方程式を使い、数種類の健康法を試すのが安全ですよ、と所長は付け加えた。
「さもないと、あんなことになります……」
道場長の指さした先には、すっかり衰弱しきった、瀕死の数人の集団が
あった。頭上には「整理健康法」とある。
「彼らは、私の忠告も省みずに、高リスクの健康法一本で通してしまった
のです。ただでさえ怪しい健康法な上、3人が禁を破ってしまった……
合計で90000ポイントも持ち点から引かれたために、全員がああなっ
てしまったのです。」
もちろん、このような人々だけではない。
フランスのジャン=ポール・ルモンド氏は、地道にやり続けてきた赤ワイ
ン健康法が大当たりし、シュワルツネッガー5人分の健康を手に入れた。
オランダのマルティン・ファン=デル=ワールス氏は、アガリクスの投機
的健康法で、風車23個分という、驚異的な健康を手に入れた。
ただ、この成功者の例を見ても、日本でこのような道場が繁栄するかとい
えば疑問を呈さざるを得ない。
むしろ、この道場においてラジオ体操が5年間にわたって一定のポイント
を保ち続けていること、日本の長寿命を見るにつけ、日本の健康法の安心
さを再認識させられた。
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